日時:2021年12月4日(土)13時~15時45分
講題:「最近の異常気象について」「災害からいのちを守る避難行動について」
講師:元気象庁予報官 入田 央(にゅうだ ひさし)氏
(現在は金光教中野教会 信徒総代、ひかりプロジェクト 副理事長)
初めてのリモートのみの講演会で、入室に手間取り、少し開会が遅れたが、山田初子信徒部次長の先唱でご祈念から始まった。
続いて山口信徒部長の挨拶
「例年、12月第1土曜日に開催されている講話と夕食の会、昨年はコロナ禍にあって、延期となってしまった。今年の開催も危ぶまれたが、入田さんのお話をぜひ聞きたいという声が多く、リモートのみの開催に踏み切った次第である。
入田さんは、長く気象庁の予報官としてご活躍され、退官後、現在は中野教会の信徒総代であり、ひかりプロジェクトの副理事長をされている。ひかりプロジェクトというのは、自然災害に遭い困っている方を支援する、自然を大切にする、次世代を担う青少年を育成する、いのちを守るための防災意識を高めることなどを理念に掲げ、活動している一般社団法人。また入田さんには、日刊工業新聞社から発行された「とことんやさしい気象の本」という著書があるので、興味のある方はぜひお読みください。
前もって、詳しい資料をお送り頂いているので、それを見ながらお話を聴かせて頂ければ、よりわかりやすいと思う。水害、地震、台風など災害が多発している現在、皆さんお一人おひとりが、今日のお話で災害から身を守るヒントを得て頂ければ有難く思う」。
---------------------------
以下、入田さんのお話を、私なりにまとめさせて頂きますが、最後に入田さんが用意された資料を添付させて頂きますので、ぜひお読み下さい。正しい理解が深まります。また、参加された皆さんから感想をお寄せ頂きましたので、それも付記させて頂きます。(記録・大塚東子)
(資料③…避難行動判定フロー)
---------------------------
「最近の異常気象について」
1945年(昭和20年)、実は入田さんの生まれた年なのですが、その年から2021年までの災害年表が、資料にあります。最高、最低、平均気温値も付記されていますが、温暖化が進んでいるのがわかります。最近でこそ、一般的に温暖化について、語られますが、入田さんが初めて、平成元年10月、新聞の天気予報欄に原稿を書かれた時、温暖化について触れています。
その頃から、専門家の間では、温暖化について議論が進み、その弊害について、憂慮されていたことがわかります。
なぜ、温暖化は災害をもたらすか。まず、雨に影響が出るのだそうで、気温が上がると水蒸気をたっぷり含む雲がわく。台風期や梅雨期に豪雨になって現れる。最近の天気予報では、「今までの記録にないような雨」という表現をよく聴きますが、実際、2019年10月の台風19号が襲来した時、相模湖ではそれまでの記録、1999年の344ミリをあっさり塗り替え、604ミリ降ったとか。同じ時、箱根町ではそれまでの記録2005年の565ミリを抜いて、942ミリ降ったと言います。どちらも今までの1位の記録の倍近い量の雨ということになります。
過去の雨量、風の強さ、潮位、高潮を参考にして作られたインフラでは、到底間に合わず、被害が出てしまう、近年災害が多発する結果になっているのだと、お話を聴いて納得し、怖くなりました。
2011年から2020年までの10年間で、地球の気温は1,09度上昇したと資料のグラフが物語っています。このままで何もしないでいれば、2030年には2度上がる結果になる。そこを何とか抑えたいというのが、パリ協定ということになります。改めて、温暖化防止の重要さを実感させられました。
「災害からいのちを守る」
私たちは多発する災害から身を守るにはどうしたらいいのでしょうか。一つには温暖化を防止することです。大きいところでは、パリ協定を成功させること、そして温室効果ガスを削減するために、身の回りの小さなことでも実行すること、です。
食べ物を含めてものを大切にし捨てない、よいものを長く使う、コンビニやスーパーでビニール袋をもらわない、節水、省エネを心掛ける、その他いろいろあると思います。一言で言えば、天地の道理に基づく生き方をすること、でしょうか。
もう一つは、インフラを整備すること、今後は「過去に経験したことのないような」雨、風に備えなければならないということです。
設備の備えも大切ですが、もう一つ大切なことは、「心の備え」です。「自らの命は自らで守る」という意識を持つこと。住まいのある場所に、どういう危険があるかを知ることがまず大事で、そのためにハザードマップを活用すること。ハザードマップは自治体に行くと、もらえます。浸水や土砂災害が発生する恐れのある場所は着色されていますので、一目で自分の住む場所の危険性を知ることが出来ます。
その上で対策を立てること。必要なものを備蓄したり、避難場所を確認するだけでなく、避難する場合、足腰の弱い高齢者が居るかどうか、介助の必要な人が居るかどうか、など条件によって、避難指示基準が違うので、そこを把握すること。車で避難することは、案外危険な場合があるので、要注意。というようなことを、覚えましたが、皆さん、それぞれに資料をよくご覧下さい。
過去の経験から、「ここはまだ水害に遭ったことはない」と思い込んでいて、避難しないということも、悲劇を招く結果につながります。過去の経験を当てにしないこと、何回か避難したけれど、何事もなかった、だから今回はやめておこうと考えるのも、いけない。何事もなければ、よかったと思って、次もまた避難すればよい。その場合もなるべく早めに対応することが大切ということです。
また台風や豪雨はある程度、予報があって、時間的な余裕がありますが、地震の場合は、全くありません。どうすればいいか。平時に、どういう行動をとればいいか、考え家族で話し合い、出来れば行動を伴う練習をしておくこと。日ごろ習っておくことで、咄嗟の場合にも随分落ち着いた行動がとれるものだそうです。
〇 質疑応答
・地震と温暖化との関係はあるのだろうか。
答え=直接の関係はないと思う。
・地域や学校、施設単位に、訓練をする必要を感じている。まずはハザードマップの見方から学びたいものだ。
・地球の50億年の歴史の中で、寒冷期があり、温暖の時代があったという。現在は寒冷の時代ではないのだろうか。
答え=地球的な規模で言うと、現代は寒冷期で、ある程度安定している状態であると思うが、現在の温暖化は人間が人為的に引き起こしたもの。
・台風のエネルギーは強大なものだと思うが、利用できないのだろうか。
答え=一説によると、水素爆弾の何倍、何十倍と言われたりするが、将来、それを利用できるようになるかもしれないが、私は専門外で-----。
〇講演後、寄せられた感想から。
・単なる知識の披露ではなく、実際に被災地で見たり聞いたりしたこと、予報官として活躍された経験に裏打ちされたお話なので、説得力があった。危機的な状況が、すごいスピードで加速しているので、まだ何も起こっていない今、勉強したり、訓練したいと思った。信心は特別問題のない時に、信心の稽古をしておいて、いざという時に備えるものだと思うが、災害への備えも信心と似ているなあと思った。
・ハザードマップをしっかり確認しようと思う。
・とても参考になった。心の備えをしたいと思う。
・司会進行役の山口さんの配慮で、皆さんが発言されて、よかったと思う。皆さんが日ごろどういう防災対策をしておられるか、聴かせて頂ければよかった。
・入田さんがまだ現役の頃に、お話を伺ったことがある。その時すでに、温暖化で災害が大きくなることを心配しておられた。時間の関係で、天地の働き、信心としてどう受け止めるかという問題には触れていなかったが、最後のご挨拶で山田先生が、金光教としての考え方をお話下さり、よかったと思う。
・気象庁のノウハウをご紹介頂いた感じで面白かった。低気圧や高気圧の渦巻きの方向は承知していたが、上空では逆の渦巻きであるということ、初めて聞き納得した。「防災講座」でもお話を聴いて、今や入田ファンです。
・人間が快適な生活を追求するあまり、自然環境に悪影響を及ぼしていることを知り、愕然としました。信奉者の一人として、日々の生活を見直し、無駄を省き、温暖化に歯止めをかけるような在り方を目指していこうと思います。
---------------------------
最後に、山田信二先生の感話・ご挨拶を頂き、鈴木徳昭信徒部次長の先唱でご祈念をして、終了しましたが、山田先生のお話は、金光教人としての在り方、信心の実践に触れておられますので、以下に掲載させて頂きます。
続いて、入田さんのお作りになった資料を掲載させて頂きます。ぜひご覧ください。(記録・大塚東子)
(資料①…最近の異常気象について)
(資料②…災害からいのちを守る避難行動)
(資料③…避難行動判定フロー)
---------------------------
閉会のあいさつ・感話 (山田信二)
ただいまは、貴重なお話を頂き有難いことでした。入田さんには、入念な準備をもって、今日の御用にお当たり頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。また、ご参加くださったみなさん、熱心にお励みくださり、ありがとうございました。そして、信徒部長始め、開催にあたり準備の御用、本日の運営の御用にお当たりくださった皆さんにも、厚くお礼申し上げます。
さて、お話を伺って感じたことを話すようにとのことですので、蛇足になると申し訳ないのですが、一言申し上げます。日頃、実感として気象の変化は感じていますが、今日はデータをもってお話し頂いたので、その変化の大きさがよくわかりました。
教祖様は、天地自然の働きを神様のお恵み、神様のお働きとしてとらえて、神様が人間を生かし、はぐくみ、楽しませてくださっていることをわかりやすく話されました。それを聞いた人も、神様の愛情と働きを、実感をもって納得したのです。
そのような教えや考え方に基づいて、金光教では天地の働きを喜ばせて頂く、という実践が根付いています。暑い暑いと文句を言うのではなく、この暑さのおかげで作物が育つのだ、ありがとうございます、と喜ばせて頂く。雨が降っても、それは恵みの雨である、と喜ばせて頂く。
しかし、近年、そうとばかり言えなくなってきたように思うのです。夏に、「暑さに感謝しましょう」とばかり言えなくなり、「熱中症になったら大変、暑さは命とりですから」と言わねばなりません。もちろん今も、天地のお働きをもって、作物が育ち、山や海の産物が取れて、私たちを楽しませてくれ、いのちを保たせて頂いています。それは基本的に変わっていません。天地のお働きに生かされていることに変わりはないのですから、そこに感謝の信心をすることは変わりありません。
それに加えて、新しい信心実践を身につけなければならないときに来ているのだと思います。地球温暖化や森林伐採による土壌の弱体化が、異常気象や災害を生み出しているというお話がありました。つまり、人間の行為によって、天地のお働きを乱してしまっているということです。
ですから、信心実践の一つとして、そのことをお詫びし、天地のお働きを乱さないように、神様のお働きの邪魔をしないように生きていかねばならないと思うのです。まずは自分のできることをするということ、また社会の仕組みを変えていくような心掛けを持つことが必要だと思います。お話にあった、カーボンニュートラルの取り組みもその一つです。
また、自然現象イコール災害ではない、災害イコール被害ではないというお話でした。激しい自然現象があったとしても、災害を抑え、被害を防ぐために、人間にできることがある、ということはとても心強いことと思いました。人間はそのための知恵と力を、神様にお与え頂いていることはありがたいことだと思いました。
自然現象を災害や被害にしない行動も、神様のお恵みを生かすことであり、神様に安心して頂くことです。これも大切な信心の実践だということを、今日のお話から気づかせて頂きました。
今日は気象のお話でしたが、このお話を基にして、私たちの信心生活のあり方を練り出して頂けたらありがたいことと思っています。